不動産業界におけるデジタル化の遅れは、多くの産業と比較して顕著です。
理由はいくつかありますが、もっとも大きな障害になっているのが「宅地建物取引業法」と言えます。第35条では、『宅地建物取引主任者が主任証を見せてから口頭と書面で重要事項を説明する』ということが義務付けられています。そのため、オンライン手続きや電子契約が進む現代社会では非効率が目立ってしまいます。
国土交通省が2017年から非対面での説明を可能にする「IT重説」の運用をスタートさせ、2019年には電子署名サービス普及に向けた社会実験を実施しました。しかしパンデミックなどが起こったにもかかわらず、知名度もまだ低い故にあまり浸透していないのが現状です。
不動産業界には投資家、入居者、建設業者、開発業者などステークホルダーが多く、全員が足並みを揃えなければデジタル化の推進が難しいといった側面もあります。複雑な業界構造も、デジタル化を妨げる一因になっています。
しかしIT重説は利便性の向上や移動コスト削減が実現できるため、今後少しずつ顧客ニーズは高くなることが予想されます。IT重説を行う際の注意点やデメリットにきちんと対策をしていれば、不動産テックなどのIT技術の取り入れは積極的に行うべきでしょう。